ツール1本が他の10倍クリックされていたら、横展開で何を転用し何を分散させるか — サーチコンソール数値起点のジャンル分散判断

2026.05.28
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ZERONOVA LAB(個人運営の AI ネイティブ実験スタジオ)では、無料の Web ツールを 1 本ずつ積み上げてきて、2026 年 5 月 27 日に間取り図ジェネレーターを公開して 97 本目になりました。Google サーチコンソール(Search Console)を眺めると、ある時期から特定のツール 1 本だけが他のツールの 10 倍ほどクリックを集めるようになっていて、そのツールを観察起点にして「次に何を作るか」をどう決めたのかを、判断ログとして残しておきます。

4 つの拘束条件 — 数字の実測起点・カニバリ警戒・資産流用度評価・ジャンル分散戦略 — を順に開いていきます。ここで言う「拘束条件」は、判断するときに自分が外せないと決めた制約のことで、フレームワークと呼ぶには軽すぎるけれど、「直感だけで決めない」ためには十分機能している、というくらいの粒度です。

なぜこの記録を残すか

97 本のツールを抱えるサイトの内訳は、月数百クリック規模の伸びを見せている 1 本と、月数十〜100 クリック規模に張り付いている数十本、そしてほとんどクリックされていないロングテールの残りに分かれています。「ツールを増やせばトラフィックが線形に伸びる」という素朴な仮説で動いていた時期もありましたが、サーチコンソールを半年眺めると、その仮説は明確に外れます。流入は線形ではなく、極端な偏りを持ちます。

そうなったとき、「次に何を作るか」の判断は、新規ジャンルを開拓する判断ではなくなります。「すでに伸びているツールの型を、別ジャンルに転用するかどうか」の判断になります。型を流用すれば開発コストは下がる一方、似たジャンルに展開しすぎると、伸びている 1 本のクリックが分散してしまうリスクが生まれます。

この「型は流用したい、でもキーワードは食い合わせたくない」という二項対立を、どう解いたのかが本稿の主題です。

拘束条件①:数字の実測起点 — 「印象」ではなくサーチコンソールの実測値で判断する

最初に外せない拘束条件は、判断の起点を 印象ではなく実測値に置く ことでした。

具体的には、サーチコンソールで過去 28 日のクリック数を見ます。当時の状況は、map-generator(マップジェネレーター — 街路図・チラシ用の手書き風地図を作るツール)が月 733 クリックで、他のツールが概ね数十〜100 クリックの範囲に収まっていました。差は約 10 倍です。

ZeronovaZeronova
サーチコンソールを見ていて、map-generator だけが他のツールの 10 倍クリックを集めている。これは観察として固いんだけど、「だからどうする」のところで、いくつかの方向性が同時に頭に浮かんでいる。深掘り(map-generator の機能を増やす)、隣接展開(map-generator の主要キーワードと意図が重なる似たツールを作る)、型の横展開(map-generator の「型」 — レイヤードエディタ・チラシ要素配置 UI — を別ジャンルに転用する)、完全新規ジャンル(型を流用せずまったく別の領域に投じる)。どれも進めていきたいけど、サイト全体の流入を底上げするという目的に対して、どこに今期の重心を置くかを決めたい。
Claude Code
数字の起点が固まっているなら、まず「何を増やしたいか」を逆算するといいかもしれません。月 733 クリックの 1 本を倍にしたいのか、それともサイト全体のクリック合計を倍にしたいのか、で選ぶ拘束条件が変わります。前者なら深掘り中心、後者なら横展開と新規ジャンルが筋になりそうです。
ZeronovaZeronova
後者。サイト全体の流入を底上げしたい。新規ジャンルは並行して走らせる前提で、ここでは「型の横展開」をどう設計するかに絞る。横展開の中で気をつけたいのは、同じキーワード群に重ねて展開すると map-generator のクリックが分散するだけで、合計は変わらないんじゃないか、という点。これが次の引っかかり。

この対話が、判断の解像度を一段上げました。「数字起点」という拘束条件は、それ単体では何も決めません。ただ、印象や直感で「ジャンルを広げよう」と動き出すのを止めて、「具体的にどの数字を伸ばしたいのか」を先に決めさせる役割を果たします。

もし map-generator が他のツールの 1.5 倍程度のクリック差だったなら、横展開の優先度は別の判断軸に譲っていたはずです。10 倍という差がはっきりしているからこそ、「型を別ジャンルに転用する」という選択肢が、他の選択肢より明らかに筋がよく見えました。

拘束条件②:カニバリ警戒 — 同じキーワード群に重ねず別軸に振る

数字の起点が固まったあとに、すぐに警戒しなければならないのが カニバリ(共食い) です。

map-generator の主要キーワードは「街路図 作成」「手書き風 地図」「不動産チラシ 地図」あたりに集まっています。ここで仮に同じキーワードクラスタを取りに行く別バリエーション(たとえば「手書き風地図メーカー」のような言い換え系)を別ページとして作ったら、検索意図が完全に重なります。Google から見れば「同じドメインに同じ意図のページが 2 つ」になり、片方のランキングが下がるか、両方が中途半端な順位に落ち着くか、のどちらかです。最悪のシナリオは、新規ツールのページが既存の map-generator のクリックを共食いして、合計が増えないどころか下がることでした。

ZeronovaZeronova
横展開を進めるとき、何を作るかよりも先に「これを作ったら map-generator のクリックを食わないか」を判定軸として立てておきたい。直感ではなく根拠を言語化しておく。
Claude Code
カニバリゼーション判定の基本は「検索意図が重なるか」です。新しいツールが既存の map-generator と同じキーワードクラスタを取りに行く設計なら同じ意図、別のキーワードクラスタを開拓する設計なら別意図、と判定できます。前者なら片方に絞る、後者なら両方作っても食い合わない、という区別です。

この判定軸で「間取り図」はどうか。検索する人は不動産・賃貸広告の文脈にいて、「街路図」を欲している人とは別の集団です。同じ「ベクター図形を配置するエディタ」という型を使っていても、検索意図が別なら別ページとして共存できます。やる判断。

ここで自分が外していなかったのは、「型が同じ」と「キーワードが同じ」は別物だ という分離でした。コードレベルの再利用度と SEO 上の競合度は、別の軸で評価しなければなりません。「型を流用するなら必ずカニバリする」と思い込んでいたら、横展開の選択肢が大幅に狭まっていたはずです。

拘束条件③:資産流用度評価 — Phase 5 のレイヤードエディタを次に何に乗せられるか

カニバリ警戒で「キーワードは別軸に振る」と決まったあと、次に評価するのが 資産の流用度 です。

map-generator は 2026 年 4 月の Phase 5 で、レイヤードマップエディタを実装していました。具体的には:

  • レイヤー制御 UI(複数のオブジェクト群を別レイヤーで管理)
  • チラシ要素配置 UI(アイコン 16 種・エリア 6 種・縦書きテキスト・信号機・駅などをドラッグ配置)
  • 色調整パネル
  • 印刷品質 PNG 出力(解像度 2 倍)
  • Undo/Redo(50 段)

これらをコンポーネント化した結果、新規ツールに「ベクター図形のレイヤード配置エディタ」が必要なら、ゼロから書く必要がなくなりました。

候補ジャンルについて、流用度を試算しました(数字は感覚値で、実装してみて初めて確定するもの):

候補主要キーワードクラスタ資産流用度別途必要な技術
間取り図ジェネレーター不動産・賃貸広告高(レイヤー・配置 UI・印刷出力すべて流用)部屋形状の数学(壁の直交制約)
席次表 / 家系図イベント・冠婚葬祭・ファミリー高(同上、配置パターンが違うだけ)関係線の描画
Mermaid 図解開発者・技術ドキュメント低(Mermaid ライブラリベース)Mermaid → SVG パイプライン
画像背景透過画像加工・グラフィックデザイン低(独立した画像処理スタック)セグメンテーションモデル

ここで気づくのは、流用度が高いものに偏らせ過ぎると、結局「同じ型のバリエーション」が増えるだけで、サイト全体のテーマ広がりが出ない、ということです。

逆に流用度が低いものばかりに振ると、開発コストが上がります。

選択するときは、「流用度が高いもの」を 1〜2 本だけ追加して型の検証を済ませ、残りは「流用度が低くてもジャンルが明確に別」のものを混ぜる、という配分にしました。

拘束条件④:ジャンル分散戦略 — 4 本の次ツールを別キーワード群に振り分ける

カニバリ警戒(拘束条件②)と資産流用度評価(拘束条件③)を組み合わせると、次に作るツールの 配分マップ が浮かんできます。

Phase 20.7 の横展開対象として、次のように整理しました:

ツール振り分けジャンル着手順位流用度
間取り図不動産1 番目
席次表 or 家系図イベント or シニア2 番目
Mermaid 図解開発者3 番目
画像背景透過画像加工4 番目

各ツールが別キーワード群に行くため、互いに食い合いません。同時に、流用度が高い 1〜2 本目で「型」の検証を済ませてから、流用度が低い 3〜4 本目に進む順番にすることで、開発コストの累積を抑えています。

ここで、開発日記にこう書いていました:

間取り図は不動産・賃貸広告という別キーワード群に行くため map-generator のクリックを分散させずに済む想定。残り3本(席次表 or 家系図・Mermaid図解・画像背景透過)の意思決定にこの実装ループの学びを使う。

順位を決めるロジックは、「流用度の高さ」と「ジャンルの隣接距離」のかけ算でした。1 本目の間取り図は流用度が高く、かつ map-generator の街路図ジャンルから「不動産」へは距離が遠すぎず近すぎず — つまり「型は使えるがキーワードは別」の検証として最適でした。

逆に Mermaid 図解(開発者向け)は、ジャンル距離が最も遠く、ZERONOVA LAB の既存ツールクラスタ(個人開発者向けの dev tools 群)とは強く接続できる位置にあります。ただし型の流用度が低いため、4 本の中では着手順位が後ろになります。

このマップを書いてから、判断ミスが減りました。1 本実装するたびに「これは何ジャンルに振っているのか」と「型のどの部分を流用したのか」を意識する習慣ができ、無自覚に隣接ジャンルへ流れ込んでカニバリを起こすリスクを構造的に下げられました。

4 つの拘束条件が回ったあとに残る判断

ここまでの 4 つを並べると、次のような順序関係になっていることが分かります:

  1. 数字の実測起点 — 何を伸ばしたいかをサーチコンソールの数字で固定する
  2. カニバリ警戒 — 同じキーワード群に重ねない(キーワードは別軸に振る)
  3. 資産流用度評価 — Phase 5 のレイヤードエディタを次に何に乗せられるか
  4. ジャンル分散戦略 — 4 本の次ツールを別キーワード群に振り分ける

最初の 1〜2 が「やる/やらない」を決める判断、3〜4 が「やるなら何をどの順序でやるか」を決める判断、という整理になっています。

4 つすべて通したあとに残るのは、もう判断の言葉ではなく 実行の言葉 だけです。「間取り図を実装する」「席次表を 2 番目に実装する」「Mermaid 図解を 3 番目に実装する」。実装の中身は別の問題ですが、何を実装するかについては、もう迷う必要がありません。

そして、1 本実装するたびに数字(サーチコンソールのクリック数)が更新されるので、次のサイクルでは拘束条件①の起点自体が動きます。間取り図が公開後にどの程度クリックを集めるかで、3 本目以降の優先順位が再評価されます。拘束条件のフレームワークは固定だが、入力データは動的に更新される という構造で、長期にわたって判断の品質を保とうとしています。

次のサイクル(席次表 or 家系図を 2 番目に着手したあと)では、map-generator + 間取り図 + 席次表 / 家系図 の 3 ジャンル合計がどう動くかを見て、4 番目以降の優先順位を決め直すことになります。最初に「次に何を作るか」を 4 本まとめて決めてしまわず、1 本ごとに数字を見直しながら順位を更新する余白を残しておくのが、このフレームワークの運用上の肝です。

拘束条件の順序を逆にすると何が起きるか

4 拘束を①→②→③→④の順番で回すと書いてきましたが、もし順序が逆だったら、どこで判断が崩れるか。これを言語化しておくと、フレームワーク自体の意味が見えてきます。

仮に④ジャンル分散戦略から始めると、「ジャンル広がりに価値がある」が暗黙の前提になります。数字起点(①)がない状態でジャンル分散マップを書くと、まだ伸びていないジャンルにも均等に投資する判断が混ざります。投じたあとに「これは伸びるはずだったのに伸びない」となっても、起点を立て直す軸がなくなっています。

逆に①数字起点から始めると、「伸ばしたい数字」が固定された状態で②③④を評価できます。④ジャンル分散マップは、①の数字を散らさないための制約になります。順番が違うだけで、同じマップを書いても、それが「攻めの拡張計画」になるか「守りの分散制約」になるかが変わってきます。

②カニバリ警戒を後回しにすると、流用度の高さ(③)に引っ張られて、似たキーワード群に複数ツールを並べてしまうリスクが上がります。コードコストの低さだけを見て展開すると、SEO 上は共食いに着地する可能性がある。だから③④の前に②を置く順序にしています。

順序自体が拘束条件の一部、というのがこのフレームワークの構造です。

個人開発に閉じない構造

ここまでの 4 つの拘束条件は、個人で 97 本のツールを運用している状況に特殊化したものに見えるかもしれませんが、構造としては個人開発に閉じません。

複数のプロダクトを抱える会社・チームでも、同じ問いが現れます。流入が偏った 1 つのプロダクトを観察し、その「型」を別ジャンルに転用したくなる。そのときカニバリを起こさず、開発コストを抑えながら、ポートフォリオ全体の数字を底上げしたい。

この問いに対する答えは、規模が違っても構造は同じです:

  • 数字の実測起点を固定する
  • カニバリ警戒で意図クラスタを分離する
  • 資産流用度を冷静に評価する
  • ジャンル分散マップを書く

個人ラボの規模では、これらすべてを 1 人で回せるところに利点があります。会社規模になると、各拘束条件に責任を持つ人(SEO 担当・PM・エンジニア)が分かれてくるかもしれません。役割が分かれても、判断の構造が変わるわけではなく、ただ「どの拘束条件が誰の責任か」が明示される必要があるだけです。

97 本目を公開した時点での記録としては、この 4 拘束のフレームワークが「今のところ機能している」というだけで、3 本目・4 本目を公開したあとに同じ枠組みが通用するかは、また数字を見て判断します。長期にわたって有効なフレームワークというより、「次の判断までの 1 か月を渡るための足場」くらいに思っておくのがちょうどいい温度感です。

呑名 健造(Zeronova) avatar

Zeronova呑名 健造

PdM × AI-Native Builder × Senior UX × Civic Tech

Web/IT業界19年以上・20以上のWebサービスを担当した PdM。コロプラ子会社(株式会社ビジプル)元代表として事業経営を経験。現在はシニア向け BtoC プラットフォームの PdM、かんたん連絡網合同会社(自治会DX)・Koship合同会社の共同代表として ZERONOVA LAB を並行運営。

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