「アイデアを貯める」機能はできた。でも、貯めたアイデアをどう「活用する」のか。IdeaSpool の開発で、この問いに向き合うことになりました。
答えとして選んだのは、ビジネスフレームワークの AI 支援です。SCAMPER、オズボーンのチェックリスト、5W1H、ロジックツリー。これらを AI で自動化することで、アイデアの発散と収束を支援する機能を Claude Code で作りました。
この記事では、特に SCAMPER とオズボーンのチェックリストを AI で実装した際の設計と工夫を紹介します。
なぜフレームワーク分析機能を作ったのか
2026年1月31日の開発日記にはこう書いています:
フレームワーク分析: アイデアを「ただ貯める」だけでなく「活用する」機能が必要だった
アイデア管理ツールを作っていて気づいたのは、「アイデアを貯める」だけでは価値が半分だということです。貯めたアイデアをどう発展させるか、どう整理するか、どう優先順位をつけるか。その「次のステップ」がないと、アイデアはただのメモの山になってしまいます。
ビジネスフレームワークは、そのための強力なツールです。SCAMPER なら発散、5W1H なら構造化、マトリックスなら優先順位付け。これらを AI で自動化すれば、ユーザーは「考えるきっかけ」を手軽に得られるはずだと考えました。
6 種類のツールを実装した理由
開発日記からの引用:
6 種類のツール: 発散(SCAMPER、オズボーン)と収束(5W1H、ロジックツリー)、整理(クラスタリング、マトリックス)をバランスよく
アイデアを活用するには、「発散」と「収束」の両方が必要です。
- 発散系: 一つのアイデアから多くの可能性を広げる
- SCAMPER(7 つの視点で発想)
- オズボーンのチェックリスト(9 つの質問で発想)
- 収束系: 散らばったアイデアを整理・構造化する
- 5W1H 構造化
- ロジックツリー・MECE 分解
- 整理系: 複数のアイデアを俯瞰・分類する
- AI クラスタリング・KJ 法
- マトリックス分析
この 6 種類を揃えることで、「アイデアを広げたい」「アイデアを整理したい」「優先順位をつけたい」という異なるニーズに対応できるようになりました。
SCAMPER の AI 実装
SCAMPER は、7 つの視点からアイデアを発散させるフレームワークです。
- Substitute(代替)
- Combine(結合)
- Adapt(応用)
- Modify(修正)
- Put to other uses(転用)
- Eliminate(削除)
- Reverse(逆転)
これを AI で実装するにあたり、いくつかの設計判断がありました。
プロンプト設計:構造化された出力を得る
AI に自由に回答させると、フォーマットがバラバラになります。「Substitute について考えると...」と長文で語り始めたり、箇条書きにしたり、一貫性がありません。
解決策は、JSON 形式での出力を指示することでした:
const prompt = `
あなたはアイデア発散の専門家です。
SCAMPER フレームワークを使って、以下のアイデアを分析してください。
## アイデア
${ideaContent}
## 出力形式(JSON)
{
"substitute": {
"suggestion": "代替できる要素の提案",
"applicability": 0-100
},
"combine": {
"suggestion": "結合できる要素の提案",
"applicability": 0-100
},
// ... 他の視点
}
各視点について、具体的な提案と適用度(0-100)を出力してください。
`;
applicability(適用度)スコアを追加したのがポイントです。すべての視点がすべてのアイデアに当てはまるわけではありません。「このアイデアには Substitute は適用しにくいが、Combine は効果的」といった判断を AI にさせることで、ユーザーに優先度の高い提案を示せます。
日本語で自然な出力を得る
開発日記にもこう書いています:
- AI 分析のプロンプト設計
- 出力形式を JSON にして構造化
- 日本語で自然な文章を生成させつつ、パースしやすい形式に
JSON 形式を指定すると、AI は英語で出力しがちです。日本語ユーザー向けのサービスなので、日本語での出力が必須でした。
const prompt = `
## 重要なルール
- suggestion は必ず日本語で出力してください
- 「〜してみてはどうでしょうか」「〜という発想もあります」のような提案形式で
## 例
{
"substitute": {
"suggestion": "ユーザー認証を SNS ログインに置き換えてみてはどうでしょうか。登録のハードルが下がります。",
"applicability": 85
}
}
`;
Few-shot(例示)を入れることで、出力のトーンとフォーマットを安定させました。
オズボーンのチェックリストの実装
SCAMPER と似たフレームワークに、オズボーンのチェックリストがあります。9 つの質問でアイデアを発散させます。
- 他に使い道は?
- 応用できないか?
- 修正できないか?
- 拡大できないか?
- 縮小できないか?
- 代用できないか?
- 置き換えられないか?
- 逆にできないか?
- 結合できないか?
SCAMPER との違いは「質問形式」であること。この違いを活かして、ユーザーへの問いかけとして出力するようにしました。
const prompt = `
オズボーンのチェックリストを使って、以下のアイデアを分析してください。
## 出力形式
各質問について、以下の形式で出力してください:
{
"questions": [
{
"type": "other_uses",
"question": "このアイデアを他の分野で使えないでしょうか?",
"suggestion": "教育分野への応用が考えられます。〜",
"applicability": 75
}
]
}
`;
質問形式にすることで、ユーザーは「答えを受け取る」のではなく「考えるきっかけを得る」体験になります。
コスト最適化:プラン別の制限
AI 分析はトークン消費が多く、コストがかかります。開発日記には:
プラン別制限: フレームワーク分析は AI トークン消費が多い(約 ¥1.5/回)ので、Free では月 3 回に制限
1 回の分析で約 ¥1.5 のコストがかかるため、無料プランでは月 3 回という制限を設けました。
制限の設計で重要だったのは「体験してもらう」ことです。0 回だと価値が伝わらない。3 回なら「便利だ」と感じてもらえて、もっと使いたければ有料プランへ、という導線になります。
ツール間連携:分析結果を次のステップへ
開発日記にはこう書いています:
ツール間連携: 「分析して終わり」ではなく、分析結果を次のステップに活かせる設計
SCAMPER で出てきた新しいアイデアを、そのまま KJ 法でグループ化したい。6 つの帽子思考法で多角的に分析した結果を、5W1H で構造化したい。
そういったニーズに応えるため、ツール間連携を実装しました:
- クラスタリング → マトリックス
- 6 つの帽子 → 5W1H
- SCAMPER → クラスタリング
技術的には、URL パラメータと sessionStorage を組み合わせて実装しています:
- ツール間連携の状態管理
- URL パラメータ + sessionStorage の組み合わせ
- sessionStorage で一時データを渡し、URL でディープリンク可能に
sessionStorage でデータを渡しつつ、URL にはツール名と分析 ID だけを含める。これにより、大きなデータを URL に含めずに済み、かつブラウザの戻るボタンでも適切に動作します。
1 日で実装できた理由
Phase H(フレームワーク分析)は、10 個の機能を 1 日で実装しました。なぜこれが可能だったのか。
開発日記にヒントがあります:
- 1 日で大規模機能を実装するには、事前の設計ドキュメントが重要
実装を始める前に、すべてのツールの入力・出力フォーマット、UI のワイヤーフレーム、データベーススキーマを設計していました。設計が固まっていれば、あとは Claude Code に依頼して「設計を忠実にコードに落とす」作業になります。
また、6 種類のツールは共通の構造を持っています:
- アイデアを選択
- AI に分析を依頼
- 結果を JSON で受け取り
- UI に表示
- 結果を保存
この共通パターンを抽象化し Claude Code に伝えることで、2 つ目以降のツールは短時間で実装できました。
学んだこと
フレームワーク分析機能の開発を通じて学んだことをまとめます。
1. AI の出力は JSON で構造化する
自然言語での出力は人間には読みやすいですが、プログラムでの処理が難しくなります。JSON 形式を指定し、Few-shot で例を示すことで、安定した出力が得られます。
2. 適用度スコアで優先順位を示す
すべてのフレームワーク視点がすべてのアイデアに有効なわけではありません。適用度スコアを AI に判断させることで、ユーザーに「どの提案が効果的か」を示せます。
3. ツール間連携で価値を掛け算にする
単体のツールより、ツールを組み合わせて使えるほうが価値が高い。連携機能により「分析して終わり」から「分析を次に活かす」体験に変わります。
4. コンテキストは必要最小限に
開発日記からの学び:
- AI のトークン消費を抑えるには、コンテキストを必要最小限に
AI に渡すコンテキストが多いほどコストがかかります。「このアイデアについて SCAMPER で分析して」と指示するとき、アイデアの内容と最低限の指示だけを渡す。関連アイデアや過去の分析結果は、本当に必要な場合だけ含める。
まとめ
アイデア管理ツールにおいて、「貯める」機能と「活用する」機能は車の両輪です。SCAMPER やオズボーンのチェックリストといった発散フレームワークを AI で自動化することで、ユーザーは手軽に「考えるきっかけ」を得られるようになります。
実装のポイント:
- JSON 出力で構造化: パースしやすく、UI に表示しやすい
- 適用度スコアを追加: どの視点が効果的かを示す
- 日本語出力を明示指定: Few-shot で例を示す
- ツール間連携: 分析結果を次のステップに活かせる設計
フレームワークを知っていても、実際に使うのは面倒なもの。AI がその面倒を引き受けてくれれば、アイデアの発散と収束がぐっと身近になります。
Zeronova(ゼロノバ)
Product Manager / AI-Native Builder
Web/IT業界19年以上・20以上のWebサービスを担当したPdM。東証プライム上場企業の子会社代表として事業経営を経験。現在はAIを駆使して企画から実装まで完結させる個人開発を実践中。